大阪高等裁判所 昭和28年(う)2470号 判決
所論は原判決の量刑不当を主張するものであるが、本件犯行の回数、横領並びに収賄した金額及び利益及び被告人の身分、地位その他記録に現われた諸般の情状に鑑みるときは、所論諸般の事情を参酌しても原判決が被告人を懲役一年六月に処したのは、むしろ軽過ぎるといつても過言ではなく、重きに失するとはとうてい考えられないので、論旨は理由がない。
尤も職権を以て調査するに、原判決は収賄の事実として証拠により被告人が職務に関し現金二万円の供与を受けた以外に、合計一〇六、六三六円に相当する飲食並びに遊興の饗応を受けたことを認定しているにかかわらず、附加刑として刑法第一九七条ノ四を適用して供与を受けた現金額に相当する金二万円を追徴したのみで、饗応を受けた分に対する金額について何等言渡をしていないのである。しかし饗応は同条所定の賄賂にあたるは勿論、これが沒収又はその価額の追徴は必ずしなければならないことは言を俟たないところである。しからばこれを逸脱した原判決は法令の適用を誤つたものといわなければならない。
しかし本件は被告人のみの控訴に係るものであるから、原判決を破棄して、更に主刑を変更せずして、附加刑たる追徴額のみを増額して判決することは刑事訴訟法第四〇二条の不利益変更禁止の規定に牴触することとなるし、主刑を軽減すれば附加刑を加重し得るにしても、すでに前段掲記の如く、主刑たる懲役刑を重からずと認める以上これを変更することは相当でなく、従つてこの措置をとることもできないので、結局この点に関する原判決の違法は判決に影響を及ぼさないので、破棄の理由とならないものである。